だから「朗読」がおススメ!

「あさイチ」に久米宏さんがゲスト出演されていて「釘付け」だった。テレビの黄金期を突っ走ってきたアナウンサー・キャスターの大先輩。直接お会いしたことはないけれど、70歳を超えた今も「伝えるプロだなぁ」とあらためて感じた。

元アナウンサー、元アナウンス室長というプロフィールから、「今のアナウンサーについてどう思いますか?」と聞かれることが度々ある。大抵の場合は、「時代によってニーズも変わるから、何とも言えませんね」などと当たり障りのない受け答えで済ます。私が、NHKの桜井洋子さんに憧れて、正しくニュースを伝えられる「アナウンサー」になりたいと思ったのは中学生の時(1981年)、その後、日芸の放送学科を目指して実際に入学・卒業する(1991年)までの10年の間にだって「アナウンサー」という職業についてのイメージは大きく変わった。「女子アナ」という言葉が生まれたのも平成のはじめごろだったし、当時はなりたい職業ランキングでも常に上位だった(今はランク外)。そして私は、バブル末期にも関わらず、50社近いテレビ局の試験に落ちて、最後の最後に偶然、地元局に拾ってもらった。

入社2年目に担当した番組が「ズームイン!朝!!」だったこともあり、福留功男さんにビシビシ鍛えられた。当時、視聴率は常に2桁という人気番組だったこともあり、とにかく厳しかった。「お前が出るとチャンネルの変わる音がする」と言われたこともある。何度、泣いたか知れない。3分の生中継のために前日はほとんど徹夜。原稿を書いては消し、書いては消し、宿泊所でひとりブツブツシミュレーションしては本番を迎える日々。出来ない自分が悔しくて、情けなかった。そんな過酷な状況の中でも喰らいついていけたのは、福留さんはじめ、各社のキャスター、関係スタッフのほとんどが「伝える」ことに熱いこだわりを持ち、そしてその「熱」を発していたからだと思う。新人もベテランも関係ない。同じ番組を作っている以上、同じレベル感を求められた。今朝の久米さんのトークに、当時のことを思い出した。視聴者のニーズをとことん追求し、原稿も、持ち物も、見せ方も細部の細部までこだわる。当時の「ズームイン」にも、福留さんにも、そういう「熱」が確かにあった。アナウンサーとしては最後の最後まで「落ちこぼれ」だったけど、あの「熱の渦」の中に身を置けたことは財産だと思っている。

私が、会社員としてアナウンサー・キャスターだったのは、28年のキャリアの中でわずか12年だけだが、今、独立して「伝えること」を仕事に選んだのにも、当時の体験があるからだろう。「伝わらないジレンマ」「伝えることの難しさ」そして時にある「伝わった瞬間の喜び」が忘れられなかった。新人アナウンサー時代から、数々の部署を経て、会社を退職して独立した今の今までずっと「どうやったらもっと伝わるか」を考えてきた。これはもう職業病だから・・・というレベルではなく「生き方」なんだろうなぁ、久米さんを見ていて思った。

研修講師として、朗読講師として学び続けるのは、この根源的な自問自答があるからなんだ。「これ以上、勉強してどうするの?」とか「もういいんじゃない?」とか「結局、何がやりたいの」とかよく言われるけど、これって「生き方」だからさ。仕方がない。

「あさイチ」で、近江アナが「良いアナウンサーってどういうアナウンサーだと思うか?」という質問に対する久米さんの答えに、大きく頷いた。例えば、目の前の原稿をただ読むのではなく、その原稿を通して、視聴者はもちろん、その出来事に関わる方々のことを「想像」し「感じる」ことが出来るか。もはや「アナウンサー」に限ったことじゃない。「事実」と「感情」はごっちゃにならないように気を付けたほうがよいけれど、それは「感情を持つな」ってことじゃない。どんなに流暢に活舌よく話したとしても、そこに「感情」がなければ伝わらない。逆に拙くても、つっかえても、「感情」があれば伝わるんじゃないかな。

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「感じて、伝える」ことを味わうのに、手っ取り早いのが「朗読」だ。おかげさまで8月3日スタートの「ラジオエフ 朗読のススメ」(富士・全5回)は、9名の方と学び合えることになった。池田の森教室(静岡市)は、単発参加もOKで、次回は8月7日(水)10:00~11:30。ご興味ある方は、info@kotosuku.com までどうぞ。

 

 

 

 

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